開花丼

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開花丼

「貴絋、神森と付き合ってるんだろ? 頼みがあるんだけど……」  明吉の言葉に貴絋は驚いた。 「付き合ってない」  クラスの皆が登校してくる20分以上前に、教室で駄弁(だべ)るのが貴絋と光一の日課となっていた。今日はなぜかそこに明吉の姿もある。 「照れるなって! 女子みんな言ってるぞ! 松葉も知ってるよな?」  少しだけ寂しそうな顔で光一は答える。 「うん……知ってるよ。辻くん、本当は君の口から聞きたかったけど」 「そんな事実ない! って言うか俺があの女と付き合ってたとしたら何なの……。ありえないんだけど」  貴絋は明吉を鋭い眼差しで眺めた。何かを言い出そうとしているのだが、恥ずかしそうになかなか話をはじめない。今度はだんだんと顔が赤くなり、貴絋は「こいつ心底気持ち悪いなぁ」としみじみ思った。 「はよ言え」  貴絋の僅かな苛立ちを感じ取った明吉は、唾を飲み込んでから静かに口を開く。 「……オレ、高橋チカちゃんの事好きなんだよね、それで神森と仲のいい貴絋に協力してほしいんだけど……」 「解散」 「おいぃッ!!」     
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