開花丼

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 先日明吉がダイアナの班の肉じゃがを欲しがった理由がやっとわかった。ダイアナの班には、高橋チカが居たからだ。  明吉のような人格者でも、恋に落ちれば欲にその身を焦がすのだ。貴絋はそれを悲しくも、微笑ましくも感じた。それに少しだけ安心も。  □  お昼の休憩に光一が思い出したように話し始めた。 「そう言えば僕、来週は姉ちゃんと山梨に行くんだ。お土産買ってくるね」 「信玄もち」  咄嗟に口から出てしまったリクエストに、貴絋は少しだけ顔を赤くした。光一は笑いをこらえながら答える。 「あれおいしいよね。任せて!」  彼は嬉しそうに話した。山梨には父方の祖父母の家があると言う。貴絋はそれを聞くと、頭に浮かんだごく自然な疑問を口にした。 「光一のじーちゃん達って、都内に住んでるって言ってなかった?」 「そうだよ。それは、お母さんの方のじいちゃん達だよ」  貴絋は言葉に詰まる。  あれ? するとどういうことだ? 「じいちゃんが二人居るってこと?」  よく考えれば、それは当たり前の事だった。一人の人間がいれば、一対の親があるのだ。当然、それは自分の母親にも、父親にも。 「俺、じいちゃん一人しか会ったことない」 「そうなの? もしかして……亡くなったとか?」 「……さあ?」     
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