開花丼

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 その彼女の表情から何かを読み取った貴絋は、自分の失言に気が付き、すぐに決まり悪そうに視線を逸らした。真織からすれば、そんな仕草さえも可愛く思える。勝手に口角が上がってしまうのをほどほどに押さえてから、言った。 「今日は半休取ったからもう行かないよ。そうだ、この前言ってた、パンケーキ食べに行かない?」  ――覚えてやがった。  貴絋は苦虫を噛み潰したような顔をした。  しかしどこかでララが聞いている可能性がある以上、断ることはできない。 「……行く」  行きたくなくてたまらないのに、そう言わなければならない事が苦痛でしかない。  またララに体を預けなければならない、パンケーキを食べさせるために。  どうか変な言動をしませんようにと祈るしかなかった。  そんな貴絋の気持ちとは裏腹に、真織は素直な貴絋の返事をとても喜んだ。滅多にない機会に心は踊る。最近、貴絋は時々だが可愛らしい様子を見せることがある。それが真織は本当に嬉しかった。  一時期とてつもない反抗期が訪れたことがあったが、あれは二年ほど前だっただろうか。今でも反抗期は続いているようだが――それでもその一時期よりは幾分落ち着いたようにも感じられる。実際貴絋がそんな風になってしまったのは、自分に原因があるとは重々承知していた。何年も前から険悪な空気を宿す家に貴絋はきっとうんざりしていたのだろう。     
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