開花丼

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 ――おい、約束通り来たぞ。  しかしララの返事はない。  嬉しそうにメニュー表を眺める真織を横目に、貴絋は必死でララの存在を感じ取ろうとするが、気配を感じられない。  ――まさか寝てんのか。  貴絋はメニューを見て頭痛を感じた。口に出すのも恥ずかしい料理名ばかりだ。 「ねえねえ貴くん。お母さんこれにしようかなぁ?」  真織が指差したのは、「ドキドキ恋するパンケーキタワー」。添えられた写真を見ると、少なくとも10枚は重ねられたパンケーキ。その上にも下にも、おぞましいほどの生クリームと苺みたいなものがトッピングされていた。貴絋はそれを見ただけで吐きそうだと思った。彼のキャベツの次に嫌いなものが、生クリームとフルーツだったからだ。 「やめとけば」  貴絋は心から助言した。いくら真織が甘いものが好きだからといっても、そんなに食べられるわけがない。 それを受けて真織は不服そうに言った。 「そうよね。いくらなんでも少なすぎるよね……」 「逆だよ逆!!」  思わずテーブルを叩きそうになった。真織は納得できないような表情を貴絋に向けたあと、再びメニューに視線を落とした。  貴絋は考える。     
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