カレー

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 貴絋は思わず席を立ってキッチンの食器棚へ向かった。シンク下に備え付けてある木目調の棚、いつもの食器の定位置だ。貴絋はそこを見て首をかしげたあと、再度頭を上げてシンクを見た。使用済みの食器は何もない。母親が食事を用意してくれている時はいつもそうだ。キッチンは綺麗に片付けてある。  なのに、食器棚はスカスカだった。  □  □  肌寒さで目が覚めた。まだよく見えない目を何度も擦りながら、目覚まし時計のバックライトスイッチを手探りで探した。ようやくぼんやりと見えてきた視界には、青く光るデジタル数字『05:47』の表示が映る。アラームより早く目が覚めてしまったのだ。それにしても寒い。冷たい風を受けて、頭が冴えてくる。  ――……風!?  急いで身を起こすと、いつも閉めたきりのカーテンが少しだけ開いている。それにもっと変なのは、そのカーテンが風を取り込んで僅かにはためいていることだ。  貴絋は飛び起きてベッドの上を走り、窓へ向かった。  ――あれ? もしかして窓開いてる? なんで? 「おおッ!?」  貴絋はカーテンを開けて唖然とした。  窓ガラスには拳台の穴が開いている。割れているのだ。穴を中心に何本もの鋭い亀裂が走っている。  思わず叫んだ口を手で押さえる。  ――まさか……泥棒?  気が動転した。寒いはずなのに一瞬で冷や汗が頬を伝う。心臓がドキンドキンと激しく主張しているのが、胸に手を当てなくてもわかった。 「……ないな、ここ7階だし」     
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