パンケーキ

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パンケーキ

 ピンクの壁を見つめていると頭痛が増してきて、貴絋は自分のエンジ色のパンツに目を落とした。その下の椅子はサーモンピンクだ。  俺はなぜこんな色のパンツを履いてきたんだと、椅子とパンツの見事な配色を見ながら大後悔を禁じ得ない。 「貴くん、お友達がたくさん出来て良かったね」  柔らかな真織の声が降ってきて、貴絋は顔を上げた。なんと答えていいかわからず、真織と一度目を合わせてから、また視線を落としてしまった。 「体育係も頑張ってるんだね。偉いなぁ」  この人は、俺の事を三歳児か何かと勘違いしているんじゃなかろうか。貴絋はそう思った。  真織にそのようなつもりは一切ないのだが、貴絋は必要以上に子供扱いされたように感じて面白くない。しばらく沈黙が続くが、貴絋にとってそれは本意でなかった。しかしこんな、居ること事態が恥ずかしいような店で、学校でのくだらない係りの事を話題にされたって、乗れるはずがない。  返事もしてくれなくなってしまった貴絋に、真織はめげずに話し掛けた。 「光一くんとも、ちゃんと仲良くしてる?」  その名を聞くと反射的に彼の笑顔が脳裏に浮かんだ。     
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