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「いやぁ、しっかりした息子さんっすね! ボクなんかより全然大人っす! でも辻さんの息子さんがこんなに大きなお子さんだったとは驚きました! 貴絋くん、いくつなの?」
「……10歳です」
そう答えてから貴絋も座った。
「辻さん若いっす! とても10歳のお子さんがいる母さんには見えないっす!」
笑いながら真織を見つめる徳重を見て、貴絋は先程の既視感の正体を掴んだ。
こいつは今朝見た明吉と一緒だ。
この男は、母さんに好意を持っている。
そう気付いた途端に自分はここに居てはいけない気になり、いたたまれなくなった。なんならすぐにでも席を外したいとさえ思う。
そんな貴紘の気も知らないで、徳重は楽しそうに話を続けた。
「貴絋くんイケメンだね! 彼女いるの? モテるでしょ!」
――うざ。
俺のことなんかほっとけばいいのに。母さんの手前それもできねーか。点数稼いどかなきゃだもんな。
内心毒づきながらも、貴絋はそれを顔に出さないように苦手なもののひとつである"愛想笑い"をする。
徳重の真織に対する好意を感じ取った途端、貴絋は彼に与えた評価を捨てた。
なぜそんな気持ちになるのかという疑問すら、まだ今の貴絋には沸かない。
しかし、一応母の面子を守ってやらなくてはという気持ちは持ち合わせていた。
「辻さんの息子さんだから、優しい性格でしょ? 一目見てわかるっす!」
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