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明吉の仕掛けたヘッドロックをすり抜けた貴絋が毒霧を吹いたところで、帰って来た光一がそれを止めた。
「松葉、何だったの? 告白?」
顔が緑になった明吉は何事もなかったかのように光一に聞く。
光一は何でもないよ、と答えはしたが、遠くから光るダイアナの視線を背中で感じていた。
『タカヒロの好きなタイプを聞いてくれた?』
『まだ聞いてません』
『今日中に聞いて! お願いね』
先ほど廊下で繰り広げられた会話であった。妙な迫力に押されて了承してしまった。まあ特に問題もないからいいのだけれど。
コホンと咳払いをひとつして、光一が単刀直入に切り出した。
「所で話変わるけどさあ、辻くんの好きなタイプを教えてくれない?」
「くさ・ひこう・こおり」
一瞬の沈黙が流れた後、明吉が勢いよく叫んだ。
「違うわ! どんな女の子が好きかって意味じゃん!」
貴絋は眉間にシワを寄せながら答える。
「さぁ……? 別にない。お前は?」
貴絋は面倒になって、ちょうど向かいに居た直也に視線を投げた。
「えっ! おれ!? おれはそうだね……優しい人がいいかな……?」
「ふーん。前から思ってたんだけど、お前なんでいつも食パンが描いてあるTシャツ着てんの?」
「わかんない……お母さんが買ってくるんだ」
「……どこで買ってんのか今度聞いといて」
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