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貴絋が直也に話しかけているのはとても貴重な場面だった。
彼なりに直也に歩み寄ろうとしているのか、それともただの気まぐれか、このまま見守っていたい気持ちも光一にはあった。だがまずい。このままでは話題がそれてしまう。
そう感じた光一は、自らの女性のタイプ論を熱く語り始めた。
「ぼ、僕はさぁ……。ちょっとワガママな人がいいんだよね! だってさワガママ言ってくれるってことは、信頼されてるってことじゃん? って言うかそんな可愛いワガママを聞ける僕、懐深い。みたいな気持ちにも浸れる二段階構造」
貴絋はワガママな女と聞いてすぐに、昨日のララとのやりとりが思い浮かんだ。
『冷凍庫にあったアイスが食べたいんだけど!』
入浴を終えた直後、突然頭に響いた声を貴絋は聞き逃さなかった。
「お前! 今日せっかくパンケーキの店に行ったのに全然出てこなかったじゃんかよ!」
『ママと行ってきたの?』
「そーだよ! 俺っお前が出てくると思ったのに出てこねーからあんなに嫌いなモン食べて……いま胃が超ムカムカしてんだけど! この状態でアイスなんか食えねーわ!」
『私もパンケーキ食べたかった!』
「何回も呼んだじゃねーか! もう約束は果たしたからな! 聞かねーぞ」
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