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「知らねーよ! こっちはお前みたいに神経図太くねーんだよ」
『まぁ失礼な坊やだね』
「……誰だって人に言いたくないことの一つや二つ、持ってんだろ」
貴紘は真織の顔を知らず知らずのうちに思い浮かべていた。
『それを踏み込んで手をさしのべて上げることが必要なときだってあるんだよ!』
「……ってかそんな深刻な場面じゃなかっただろさっきのは。そもそも人のトイレを覗いてんじゃねーよ条例違反で訴えるぞ!」
『異議あり! って一度言ってみたかったんだよね~』
「言うのは被告人じゃねーから!」
独りで喋りながら颯爽とグラウンドへ向かう姿は、端から見ればもはや完璧にアブナイ人である。
貴絋は、今やララと会話をするのになんの躊躇も持たなくなっていた。
「オレと貴絋のツートップで行こう!」
サッカークラブに所属している明吉は、自分の魅力を最大限に引き出せる時と場所を心得ている。
「体育の授業ごときでフォーメーション組んでんじゃねーよ」
やる気のない貴絋に明吉は囁く。
「オレだってチカちゃんにカッコいいとこ見せたいんだよっ。頼むよ貴絋。いいパスくれよな!」
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