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確かに明吉はサッカーがうまかった。ボールと足がゴム紐で繋がっているのではないかと思うほどドリブルも華麗だ。ボールがその足に吸い付いたように離れない。素人の相手キーパーなどザル同然で、何本もシュートを決めていった。
ほとんど試合になっていなかった。明吉のボール支配率が既に八割を越えたころ、貴絋は勝手にDFの位置まで下がっていた。ゴールを守っている光一のそばまで行くと、「交代」と言って肩を叩く。
「ええっ!? 嫌だよ僕FWなんかできないよ!」
「大丈夫。明吉が一人でやるから」
「無理無理無理無理ィッ! 僕極度のサッカーボールアレルギーだもん触れたら死んじゃうよ!」
「お前ゴール守る気あんの?」
貴絋はグローブを流れるように奪ったあと、ペナルティエリアの外に自然に光一を連れていき、自分はゴールの中へと戻った。
走りすぎて疲れた。しばらくここで休んでいよう、そう思って。
そこから眺める景色はなかなか悪くない。明吉がほとんどボールを持っているおかげで、全員が向こうのゴールを向いている。スプラトゥゥーンでも持ってくればよかったなと思った。
さりげない勝手なポジションチェンジを見ていたのは、ダイアナであった。彼女は思うところあり、今日のほとんどを彼の視察に費やしている。
――タカヒロがキーパーになった! 想いを込めたボールを受け止めてもらうなら、Now!!
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