ララといっしょ。

アイスクリーム

　有能なYouTuberは、料理もリアクションもスポーツも万能なのである。すべてのチャンスは彼女のために生まれてきたようなものであった。むしろ、彼女はなんでもないときに、チャンスという名のハプニングを呼び起こすことができるのだ。
　余裕綽々でドリブルをこなす明吉の前に立ちふさがると、見るも鮮やかな素早い動きで彼の進むべき道を遮った。後(のち)のダイアナフェイントである。
　突然の出来事に驚いた明吉に生まれた隙を見逃すほど間抜けな彼女ではなかった。
　颯爽とボールを奪うと、目にも止まらぬ早さで相手のゴールを目指す。明吉が気付いたときにはボールは足元になく、代わりにYouTuber御用達チョコエッグが置いてある。

「何これいつの間に！？」
　彼女からすれば赤子の手をひねるより容易いこと。
　誰もダイアナの俊敏なドリブルを止められるものなど居なかった。手持ちぶさたのあまりそこで合鴨農法を勉強していた貴絋は、あまりの殺気にその顔を本から上げた。
「タカヒロ！！」
　守備陣は両隅にはけて、既に戦意を喪失している。その真ん中を堂々と走ってくるのはダイアナだった。
「なんだアイツ……」
　ただ事ではないと本能で感じ取った貴絋は瞬時に腰を落とし、最後の砦を守る構えを見せた。