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貴絋の覚悟が両腕に宿る。ボールは凄まじい勢いで光を放ち始め、触れれば無事で済まない事を物語っている。貴紘は唇をきつく結んだ。その自らの両腕を捨てる覚悟は、ある女神に愛された。
耳を澄ませるだけでボールの位置がわかる。風が歌うように教えてくれる、進むべき道を、取るべき最良の構えを。
「来る!」
獰猛な獣に体当たりをされたら、きっとこんな感じだと思った。両手に手応えを感じた貴絋は風が止んだのに気付くと、ゆっくりと目を開けた。
その腕にはしかとボールが収まっている。ブスブスと黒い煙がグローブから立ち上っていた。貴絋を愛した女神の名はヴィクトリア。勝利の女神であった。
しばし呆然と立ちすくむ貴絋の元へダイアナが駆け寄ってくると、彼女は貴絋に向かって言った。
「私のシュートを止めたのは貴方が初めてよ。タカヒロ……そのボールに込めた私の気持ち、わかったでしょ?」
「わかんねーよ……てかお前何者だよ」
ダイアナは悲しそうな顔で肩をすくめ、話し続けた。
「……タカヒロ、浮気したよね?」
ダイアナは泣いた。
「は!? 何だよソレ……」
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