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そう言うと、慌てて保健室を出ていってしまった。あまりに素早く去ってしまったので、声を掛ける隙もなかった。
まだ謝ってない。そう思った。
だけどちらりと右隣を見ると、そこにはまだ涙を静かに流し続けているダイアナがいる。
「そっちの子は? どこが痛いの?」
先生が穏やかに問い掛けた。ダイアナはただ首を横に振るばかりであった。
「ここで休んでいけば。俺も戻る」
貴紘がそう言ったとき、ダイアナはやっと口を開く。
「まだ……話、終わってないっ」
その手は貴絋を引き留めるべく、彼の上着の裾を握って離さない。
「おい離せよ……ってか泣くな」
これじゃまるで俺が泣かせたみたいじゃねーか。
先生はなるべく二人を見ないように気遣ってくれてはいるが、笑いを必死に堪えているようにも見える。
……何これクソ恥ずい。
貴絋が途方にくれていると、先生が突如立ち上がり二人に言った。
「先生ちょっとお手洗いに行ってくるね。少しの間留守番を頼んでも良い?」
貴絋は静かに頷く。先生は二人の髪をポンポンと軽く叩いてから出ていった。彼女の気遣いを無駄に終わらせないためにも、とっとと話とやらを終わらせねばなるまい。
「なんだよ話って」
ダイアナがうつむいたまま、静かに話し始める。貴絋からは彼女の髪の毛しか見えない。
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