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「……タカヒロ、私というものがありながら……昨日一緒にいた綺麗なお姉さんは誰なの」
貴絋は一生懸命考えた。まず、「私というものがありながら」と言う点だ。この女は何か勘違いをしている。前々からどこか話の噛み合わない女だとは思っていたが、この際はっきりさせておかなくては後々面倒なことになっても困る。
次に「綺麗なお姉さん」
誰だよそれ。
昨日は帰ってから出掛けてない。ましてや綺麗なお姉さんに該当するような知り合いが貴絋には居なかった。
「見間違いじゃねーの。それに俺がどうしようとお前にはカンケーないだろ」
「私がタカヒロを見間違うはずがない。そうでしょ? 私見たの。あなたが女の人とピンクのカフェに入っていくところを。関係ないってどういうこと? タカヒロは私の彼氏でしょ? 他の女の人と仲良くされたら悲しい」
ピンクのカフェ。忘れもしない悪夢。
それ俺の母さんや。
貴絋はことの顛末を瞬時に理解した。あと彼氏じゃない。どこでどうなってそうなった。一瞬ララを疑ったが、なんとなく違うとも思った。ララが無意味にそんなことをするはずもないだろうと考えて、ゾッとする。何故俺はあんな得体の知れない幽霊に信頼を置いているんだと。
「俺、お前と付き合った覚えないんだけど」
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