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貴絋は、とりあえず自分の最たる意見を主張した。意見と言うか、事実だ。
その言葉を聞くや否や、ダイアナはさらに大粒の涙をこぼしながら訴える。
「忘れたの? タカヒロ、社会見学の日が二人の記念日だよ。どうしてそんなこと言うの」
「悪いけど勘違いじゃねーの?」
「白紙に戻そうってこと?」
噛み合わねーな……。きっとこいつと俺とでは脳の作りが違うんだ。
貴絋は、つくづくそう思った。
「……あー。じゃあそれでいいや。別れてくれよな」
そこまで言うとやっとダイアナは、貴絋の服の裾を離した。
「私のこと嫌いになったの?」
「えっ。別に嫌いじゃねーけど……、好きでもねーし。てかこんな面倒な話をしなけりゃならねーんなら誰とも付き合いたくない」
ダイアナは涙を手で拭うと、貴絋を強い眼差しで睨み付けて言った。
「じゃあ、あの綺麗なお姉さんともそういう関係じゃないのね?」
貴紘は一時だんまりを決め込んだ。ダイアナは心配になって彼を見つめるが、恥ずかしそうに視線を合わせない貴紘の顔は、耳まで赤く染まっている。
「なに、そのReaction……!? まさかあなたッ!」
「……んだよ」
「えっ!? やはり年上の女性が……!?」
「母さんだよッ!!」
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