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背中を床で強打し、我に返った貴絋が見たものは、無惨な姿の直也だった。
「ごめん!」
さすがの貴絋も慌てる。咄嗟に出たのは素直な謝罪の言葉だった。
□
保健室の隣に簡素なシャワー室がある。本来なら生徒は自由に使えるものではないのだが、事情が事情なだけに貴絋が先生に頭を下げて使わせてもらえることになった。
「そこまでしなくていいよ……」
直也はそう言ったが、いくらなんでも牛乳に浸かった服と頭で午後の授業を受けさせることはできない。彼が食パンならあとは卵を付ければフレンチトーストになってしまう。
直也のズボンはかろうじて無事だったが、食パンの描かれたTシャツは牛乳まみれになってしまった。貴絋は彼がシャワーを浴びている間、それを隣の洗濯機で洗った。早く洗わないと、変な臭いがついてしまうと思ったからだ。
そこに貴絋がいると知らない直也はドアを開けて悲鳴を上げた。貴絋が驚いて振り返り見たものは全裸の直也だったが、その有り様に目を離すことができない。直也は急いでシャワー室のドアを閉めたが、貴絋はそれをまた開けた。
「お前それどうしたの」
直也の体はアザだらけであった。
質の悪いタオルを受け取り、肩から羽織った直也は決まり悪そうに言う。
「蚊にさされまくってしまった……」
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