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推定年収三億円……。いつか光一が言っていたのを今さら思い出す。脳の作りが違うのも納得できる。生きる環境が違いすぎたのだ。
逃した魚はでかかった……? 一瞬そんな言葉が脳裏に過り、慌てて頭を振った。
「お茶入れてくるね! コーヒー? 紅茶? それともオレンジジュース?」
「牛乳」
ダイアナは朗らかに返事をすると楽しそうに部屋から出ていった。それはもうスキップで。
彼女が出ていったこの部屋は、先程までとうって変わって静かになった。ダイアナがいかに賑やかなのかを嫌でも痛感する。
しばらく彼女は帰ってこなかった。まるで生活感のない広すぎる部屋に貴絋は落ち着かない。
『憧れる~! こんなおうち!』
ララが静かに囁いた。
「お前、何処に住んでたの。てかなんで死んだの」
『一番やりたかったことをね、やりきって死んだのよ』
いつになく真面目な声でそう答えたララを感じ、貴絋の胸の奥がドキンと跳ねた。前聞いたときは、忘れたと言っていたのに。この世に残っているうちに段々と思い出してきているのかもしれない。
「なんだそれ。だったらなんで未練タラタラで」
『それでもまだスイーツへの未練が絶ちきれない……ねえ! パンケーキ私が食べてもいいんでしょ? この間、アンタが私の代わりに食べたベリーのパンケーキを思うと夜も眠れなくて……ッ!』
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