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五十代位の、お婆さんと呼ぶには少し躊躇われるような見た目の女性だった。品のある雰囲気にも関わらず、それにはとてもそぐわない攻撃的な威圧感を放っている。
「……ばーさん何か用? 殺気出しすぎ」
貴絋は躊躇なく女性に声をかけた。もしかすると直也の知り合いかもしれないと思ったから。しかしそれにしては好意的な空気でないと肌で感じる。
「坊や達、お名前は?」
はっきりとした物言いに、この人の性格を垣間見た。気の強そうな、厳しそうな声だ。
「僕の名前は宮地……」
素直に答えようとしている直也に割り込んで貴絋は警告した。
「不審者に個人情報与えるな」
女性は貴絋に少し近付いてから彼の顔をじっと眺めると、あなたが貴絋くん、と呟く。
貴絋は吃驚して思わず後ずさった。
なんだこのババアは。気味悪い。なんで俺の名前を知ってるんだろう。
「お前誰なんだよ」
貴絋の無礼な言葉を聞くと女性は、やっぱりな、という風な顔で笑った。それが貴絋には、とても意地悪な顔に見えた。
「父親によく似ているからすぐにわかった。その、人をバカにしたような目。傲慢な態度、あの男にそっくりだ」
恐怖のあまり喉が詰まる。思わず再び退くと、後ろにいた直也の肩にぶつかった。
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