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オムレツ
直也の母親はいつもはとても穏やかで優しい人なのだという。ところが、月に一度くらいのスパンでまるで人が変わったようにイライラと怒りやすくなる日が来る。直也の父が単身赴任してからというもの、そのスパンはどんどん短くなっていった。
怒り出した母の興奮は直也の泣きをもってしても止めることができず、彼はその暴力に耐えるしかなかった。そのうち彼女は恋人を見つけ、やがてその人は直也の家にも悪びれなくやってくるようになった。最初は一時間、最近ではついに朝まで。
「友達の家に泊まるからって言ってある」
貴絋が、一応家の人に連絡をしろと言うと、直也はそう答えた。もし自分が直也を見つけなかったら、彼は公園で週末を過ごすつもりだったのか? そう思うと貴紘は沸々と沸き上がる怒りを抑えることが出来なくなった。
「お前の母さんおかしいよ。ムカつかねーのか? 俺なら殴り返してる。それに、そう言うの……ほんとのウワキじゃん、父さんに言えよ」
貴紘の部屋で、膝を抱えた直也はそのまま顔を伏せてしまった。
「そんなことしたら……取り返しの付かないことになってしまう。おれが黙ってれば、今まで通り大好きな家族でいられる」
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