19人が本棚に入れています
本棚に追加
「……そんなの家族って言えるのか」
――ホントの家族も知らないくせに。
貴紘は内心で自虐した。しかし、実の子供を暴力で傷付ける。どうしてそんなことができるのか貴紘には理解できなかった。正人は教育に関して適当だが、殴られた記憶は一度もない。真織なんて殴る以前の問題。怒られたことすらないのだから。
直也も直也だ。そんなにひどい仕打ちを受けていながらどうしてそんな母親を慕えるのか。しつけにしたって許せる域を越えている。
「本当は優しいお母さんなんだ。おれはお母さんが大好き……言えないよ、こんなこと、誰にも」
やりきれない気持ちが貴紘の心を苛立たせた。
俺みたいなひねくれた子供を殴るならわかる。直也は真面目で素直なヤツ。嘘もろくにつけないようなこいつが、家庭で問題を起こしてるとも思えない。それなのに、どうして本当の母親が自分の産んだ子供を。
「……お前が言えないなら俺が言ってやる。親父の番号教えろ」
「……ありがとう、でも、俺は大丈夫」
その言葉に貴紘の怒りは沸点を越えた。
「大丈夫じゃねーじゃん! 不審者に拐われてもいいって思ってるほど追い詰められてんじゃん」
直也は驚いて貴紘を見上げる。
「お前のいうこと素直に聞く俺だと思うなよ」
最初のコメントを投稿しよう!