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「よかった! おかわりあるからたくさん食べてね!」
やめろというのに直也は聞かなかった。その後もさらに食べ続けた彼を貴紘は完全に尊敬した。
さらに食事のあと、直也は食器洗いを買って出た。
「本当にいいの? おばさん本当に助かっちゃう。ありがとうね」
その言葉を聞いた直也はこぼれるような真織の笑顔を見て、また涙を流した。
清潔に保たれた住居に、優しい笑顔のお母さん。仕事は忙しくて大変そうだけど、家にいるときには手作りの料理を食べさせてくれる。
そんなことが当たり前のように流れているこの空間が、自分の過ごしている環境と余りにもかけ離れていて、直也はまた悲しくなってしまった。
「どうしたの? あ、あれ……? おばさん何か変なことを言っちゃったかな」
真織はあたふたしながら腰を屈めると、遠慮がちに直也の背中を撫でた。それがスイッチになったかのように、肩を震わせて激しく泣き出した直也の涙は、止まるところを知らない。もらい泣きをしたのかなんなのか、なぜか真織まで泣き始める。
しゃくりあげるように泣いている直也を見て貴紘はガラにもなく、このままではいけないと強く思った。
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