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きっと昨日はよく眠れなかったのであろう、直也は泣き疲れて、真織がソファでなだめている間に寝てしまった。
「頼みあるんだけど」
貴紘は真織に言った。真織は直也にタオルケットをかけてやると、貴紘の顔を見つめて答える。
「言ってごらん」
「しばらく直也をここに置くことになるかもしれないんだけど」
「それはいいけど、貴くん。どこか行くの?」
「出掛けてくる」
着替えを終えた貴絋は、すぐにでも出掛けようとリビングのドアに手を掛けた。
「待って貴くん。どこ行くの」
「直也ん家」
貴紘はリビングのドアを閉めた。
靴を履きながら気が付く、俺、直也の家を知らない……。クソな母親に一言言ってやろうと息巻いていたが、その勢いは一瞬で鎮火する。めっちゃマヌケじゃん……。
しかし、もしかしたら光一なら知っているかもしれないと思い直し、彼に電話をかけようと履きかけた靴を脱いだ。そして立ち止まる。そう言えば光一は今頃山梨にいるんだ……。もういちどリビングに戻ろうとドアを開けた瞬間、そこに直也が立っていた。
「あ、びっくりした。起きたの?」
「ごめん……さっきは取り乱してしまって。おれ……そろそろ帰るね」
青い顔した直也が言った。
「辻くんのお母さん、お世話になりました。ごはんごちそうさまでした」
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