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礼儀正しく挨拶をする直也に、真織は何を感じたのか。
「直也くん、まだゆっくりしていっていいのよ。なんなら今日も泊まってくれても構わないわ」
貴紘と直也の様子を見て何かを感じ取ったのかもしれない。むしろ、あれだけ取り乱した直也を見て何も感じないのも問題だが。
「いえ、帰ります。本当にありがとうございました」
「じゃあ送る」
貴紘は直也をリビングから引っ張り出すと乱暴にドアを閉めた。
玄関に仁王立ちしている貴紘を見上げながら靴を履いている直也は、少し怯えながら貴絋に言う。
「一人で帰れるけど……」
「お前の親に一言言わないと気がすまない。悪いけどそのあとはまたお前を連れて帰ろうと思ってる。危険な家にお前を置いておけない」
「大丈夫、……おれ、自分で話してみようと思って。母さんも、話せばわかってくれるかもしれないし」
貴紘は傘立てから武器になりそうな傘を物色している。万が一の事を想定して、なるべく手に馴染むそれも強靭なものを携えなければなるまい。
「話してわかる相手なのか」
「おれ、やめてほしいって話したことなかったから。言ってみようと思って」
貴紘は呆れた。こいつはどんだけ人が良いのだろうと。そうじゃなければただのバカではないか。
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