信玄餅

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 なんとなく……というか、それはそうだろうなと貴紘は思っていた。自分と光一が話し始めてから、光一は結構な割合で自分の傍に居てくれるようになったもので。 「でも、もしおれの体を見たのが光一だったとしたら、きっとこのことは話せなかったと思う」  二人は壁を背に、手を繋いで横に並んでいる。貴紘は前だけ見つめて黙って聞き続けた。 「きみだから話せた、俺の話、聞いてくれてありがとう。心配してくれて、ありがとう」 「あのな……これから死ぬみたいなこと言うな」 「おれはね、いい子ぶってるけど本当は性格悪いんだ。家の中だってこんなだし……。光一は地でいい奴だから、あんまり暗い部分見せたくなくて」 「地で性格良くなくて悪かったな……」  その言葉に直也は顔を綻ばせた。 「ごめんね……けど笑える」 「あっそ」  それでも貴絋は、直也の事を性格が悪いだなんて思えなかった。  直也の性格が悪いとしたら、俺なんかどうなるんだろ。いい子であろうとすらしてないんだから……。 「まあ、ちょっと話してきますわ」  明るく振る舞いながら、直也が言う。無理をしているのが見え見えだった。 「ここで待ってるから」  最後に直也が貴紘の手をぎゅっと力を込めて握ってから、すぐに離した。  彼はカギを開けて、部屋に入っていった。  □     
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