19人が本棚に入れています
本棚に追加
なんとなく……というか、それはそうだろうなと貴紘は思っていた。自分と光一が話し始めてから、光一は結構な割合で自分の傍に居てくれるようになったもので。
「でも、もしおれの体を見たのが光一だったとしたら、きっとこのことは話せなかったと思う」
二人は壁を背に、手を繋いで横に並んでいる。貴紘は前だけ見つめて黙って聞き続けた。
「きみだから話せた、俺の話、聞いてくれてありがとう。心配してくれて、ありがとう」
「あのな……これから死ぬみたいなこと言うな」
「おれはね、いい子ぶってるけど本当は性格悪いんだ。家の中だってこんなだし……。光一は地でいい奴だから、あんまり暗い部分見せたくなくて」
「地で性格良くなくて悪かったな……」
その言葉に直也は顔を綻ばせた。
「ごめんね……けど笑える」
「あっそ」
それでも貴絋は、直也の事を性格が悪いだなんて思えなかった。
直也の性格が悪いとしたら、俺なんかどうなるんだろ。いい子であろうとすらしてないんだから……。
「まあ、ちょっと話してきますわ」
明るく振る舞いながら、直也が言う。無理をしているのが見え見えだった。
「ここで待ってるから」
最後に直也が貴紘の手をぎゅっと力を込めて握ってから、すぐに離した。
彼はカギを開けて、部屋に入っていった。
□
最初のコメントを投稿しよう!