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抵抗しようにも、自分を見下ろす少年の足は両腕を踏みつけている。それが信じられないほど凄まじい力だった。見た目は華奢なのにどうしてこんなに重いのだろう。それにとても小学生に出せる力ではないと思い、不可解な現象に鳥肌が立つ。――重さだけじゃない、こいつを中心にめっちゃGがかかってる! それもすごく嫌な空気を帯びて……。まるで怨念のようだ……!
少年の刺すような冷たい瞳を知りゾッとする。
床から無数の黒い腕が伸びてきて男の身体をそこへ張りつけた。もう、指一本も動かせないのに、さらに出現する黒い腕はぐるぐると男の周囲を出入りしながら回り続ける。それらはこの男のみが見せられた幻覚であった。
恐怖のあまり失禁した男を見て、ララはニッコリと笑い、傘を後ろに投げた。
「なんてね。アンタと同じことするほど暇じゃない。最低な男……殺す価値すら見出だせないよ。塀の中で後悔しなさい。この子達を傷付けたこと、絶対に許さないけど」
そう言ったあと今度は確実に直也の手を取り、二人の狂人から距離をとった。
直也の母親が何か口を開こうとしたとき、玄関の方でバタバタと騒がしい音が聞こえた。それからすぐにドアが開くと、どこからやって来たのか警備員の男と真織が顔面蒼白で転がり込んで来る。
「貴くん! 貴くん!」
貴紘の顔面のケガを目の当たりにした真織はすでにパニック状態で、普段の穏やかな雰囲気などどこかに投げ去っている。ララは、出番は終わったとばかりに身体の主導権を手放した。
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