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「怖かったよ。貴くんに何かあったら、と思って……すごく心配した」
貴紘と直也の様子がおかしいと踏んだ真織は、彼らが家をでたあと、尾行した。しばらく見守っていたが、貴紘が尋常でない様子で直也の部屋に入ったのに気が付くと、目星をつけていた警備員をつれて彼らのもとへ急いだのだった。
「でも、本当に良かった。二人が大変なことにならなくて……」
真織が手を握る指に力を感じ、そこから本当に暖かい何かが伝わってくるのを貴紘は確かに感じた。けれどその正体がなんなのかはまだわからない。
自分だって、こんなに大事になるとは思ってもいなかったのだ。まさか警察沙汰にまでなるなんて。
「……悪かった」
貴紘は、やっとの事でそれだけ言った。
目まぐるしく終わりを迎えた一日は短く、既にくたくただった。寝ると告げてから貴紘は部屋に戻った。
「ララ」
暗い部屋でベッドに横になると、貴紘は心の奥に呼び掛ける。なんの反応もなく出てこないかと思ったら、しばらくして静かに返事をくれた。
『あんた、無茶しすぎだよ。私がいたから良かったものの……。あんまり気軽にケンカを売っちゃダメ』
「頼んでねーのに」
『そう言う可愛くないこと言わない!』
「……サンキュ」
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