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今回ばかりは礼を言わざるを得ない。一歩間違えれば死ぬ恐れがあったのだから。
直也の母親と男はあえなく御用となった。あの部屋から非合法のドラッグが検出されたらしいと後に知り、貴紘はますます直也を不憫に思った。
これから直也は父親の赴任先で生活するらしい。また直也の事を思い出すと複雑な気持ちになる。
「これで良かったのかわからない。ずっと考えてる。でも、答えがでない」
誰に言うでもなく、貴紘は小さく呟いた。
『良かったに決まってる。あのままだと、直也はきっともっと傷ついてたよ。本当はこういうことは、回りの大人が気付いてやらなきゃダメなんだ。見てたでしょ? 部屋から出てくるアンタ達をさも心配そうな顔で見守っていた近所の大人達を。でもね……大人になるとそういうことから距離をとってしまうんだよ。関わりたくないって思ってしまうんだ。だから、せめて今だけは……自分の正しいと思ったことをしなさい』
「……直也は俺のしたことやっぱり怒ってるかな」
『どうしてそう思うの?』
「だって……母親は捕まったし、直也は転校することになった」
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