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「……食器、なんで無くなってんの?」
「お母さんね、割っちゃった」
やっぱボケてんな。
もう少しで口に出るところだったのを堪えて、貴絋はリビングを後にした。
□
教室のドアを開けてすぐに光一がこちらを向いた。貴絋はまず光一が居たことに驚き、次に、昨日学校へ行けなかったことへの後ろめたさをすぐに思い出す。
「辻くんおはよう! ねえ大丈夫なの?」
貴絋は咄嗟に右手をパーカーのポケットに突っ込んだ。
「……何が?」
「何がって、ケガして病院いってたんでしょ? 昨日花枝先生が言ってたよ」
俺にプライバシーはねーのか。貴絋はそう思った。
「なんでケガしたの?」
「……まあ、ちょっとな」
――寝ぼけてガラス割ったなんて言えっか。
光一は貴絋の右手の包帯に気付くと、心配そうにそれを眺めた。
「それよりなんでお前またこんなに早くにきてんだよ」
光一の視線が貴絋の右手から、貴絋の顔へと移動する。じっと見つめられた貴絋は思わず目を伏せた。
「よくぞ聞いてくれたね」
「……はぁ?」
光一は自分の机にゆっくりと向き直ると、中から何かを取り出す。それは薄っぺらいベニヤ板のような物だった。その表面には何やら文字がたくさん書き連ねてある。
「こっくりさんって知ってる?」
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