目玉焼き

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「さらっと怖ぇこと言うな! ってか俺にもわかるように説明しろよっ」  光一はベニヤ板を持ち上げると裏返したり角度を変えたりしながら何度も石を撫で続ける。 「ある一定の条件を満たすと儀式開始の合図としてこの赤い石が光るんだ。今僕たちは条件を満たしているのに合図が作動しない」 「電池切れてんじゃねーの? ミニ四駆(単3形)の電池なら俺、お道具箱に持ってるけど」 「それ本気で言ってる? 電池なんか使わない。動力源は魔力なんだからね。これだから素人は困るよ」  言ってる意味がわからないが、貴絋を苛立たせるには充分だった。でも相手は末期の患者なので、自分が大人になろうと哀れむ瞳を向けるだけにしておく。  あと五、六年くらいしたら、こいつは俺の記憶を消しに来るに違いない。まともに成長してればの話だけど。そんな風に貴絋は光一を気の毒に思った。  しかしそれは間違いである。その頃には恐らくこの病はさらに深刻になっている可能性が高い。  ――つーか俺、何やってんだろ。 「ちょっと条件を話すから、一応辻くんも確認してみてくれる?」  光一があまりにしつこく懇願してくるので、貴絋はやむ無くこれを聞き入れた。その条件とはこうだ。  1,密室であること  2,本来なら人が集まる場所であること     
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