目玉焼き

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 3,その部屋に二人だけしかいないこと  4,手を繋ぎ、どちらか一方が石を撫で続けること 「全部満たしてると思うけど……ってかその板がぶっ壊れてんじゃねーの?」  念のため教室のドアと窓も確認した。きっちりと閉まっている。貴絋は、こんなことをしている自分が恥ずかしくてしかたがない。  しばらく考え込んだ光一が貴紘を見つめる。 「……誰か、いるね」  いつもより1オクターブ下げた声で重苦しく呟いた。  貴絋は呆れて返す言葉がない。  ――もうやめてくれ。  恥ずかしさのあまり顔が熱くなるのが自分でわかった。  光一は先の言葉を言ってからすぐに、怪しい板をランドセルに厳重にしまった。 「今日はもう、やめだ」  彼はそう吐き捨てると、教室のドアと窓を開けて、よどんだ空気を入れ替える。  貴絋はまだホームルームすら終えていないというのに、マラソンを走った直後のようにくたびれていた。それを後で光一に話したのは間違いだった。 「当たり前さ。魔力がない人間は体力を奪われるのだから」  真顔でそう言った光一を見て、初めて自分の中に揺らぐ攻撃的な炎を感じとることができた。  □ 「じゃ、体育係の人はボールを倉庫に片付けてから来てね」     
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