ゴーヤチャンプルー

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ゴーヤチャンプルー

「世界を手にした。今なら私、何もない空間からオリハルコンの靴を創造することができるわッ!!」 「してどーすんだよ」  さっきからダイアナは訳のわからないことを喋りまくっているが、ある意味助かったとも言える。あのまま沈黙が続いていれば、貴紘の精神が持たなかった。 「最高にhappyな人間は時に意味のないことを始めるのよ。ピラティスとかね」 「それは意味あるだろ別に……」 「タカヒロ、大好き!」  屈託のない笑顔で何の脈絡もなく言うダイアナに、貴紘は何も言えなくなった。普通に照れる。どんな顔をしていいのかわからない。それに拉致監禁されているこの状況でも、ちっとも怖くないのが自分でも異常だと思えた。  ガゴンとエアコンが大きく音を立てた。二人が驚いて見上げると、ほぼ同時に鍵がかかっていたドアが開く。瞬時に視線をそちらに移動させると、とても悪人に見えない気の良さそうな男が申し訳なさそうに現れる。見覚えのあるその顔にハッとした。いつか、帰り道でダイアナにサインを求めてきたハゲの一人だ。貴紘はすぐに立ち上がってダイアナの前に出る。 「ごめんね、お腹すいたでしょう。さあ食事にしよう」     
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