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貴絋は、朝食をいつも食べない。食べる習慣がないのだ。大体、わざわざ自分で作ってまで食べる時間があるならその分寝ていたい。というかそもそも、自分の作った料理を食べるなんて罰ゲームだ。
顔を洗って歯を磨いて着替えた。今日は何曜日だったっけ、と一瞬頭をよぎるが、曜日がわかったところで時間割りを把握していない。前回学校に行ったときからまるで開けていないランドセルをそのまま背負い、貴絋は玄関を後にした。
マンションのロビーを抜けると、思ったより寒かった。あまり肉のついていない割には縦に長い身体を縮こまらせて、なるべく早くあるく。こんなに早く家を出て、学校へいくには早すぎる。だが家に居れば、じきに夜勤明けの母親と顔を合わせることになる。貴絋はなるべく母親と一緒にいる時間を多くとらないように心掛けていた。それは彼の出来る小さな反抗であり、遠慮だった。
特に指先が冷えた。ただでさえ寒いのに、海沿いの街だから余計に冷える。貴絋は一目散に走るとコンビニへ向かう。
雑誌のコーナーで今日発売の漫画雑誌を手にしようとしたとき、窓ガラスに自分の顔が映ったのが見えた。顔が白いせいで、うっすらと見えるクマがよりきわだって存在しているように思える。
その顔を見るたびいつも思う。つまらない、辛気くさい顔だ。何が楽しくて生きてるんだろう?
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