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「申し訳ありませんでした。君がダイアナちゃんの想い人という事に気付き、腹が立ちあんなデマを……。だけど僕たちは気が付いた。彼女のファンであるなら、彼女の幸せを一番に考えなければならないと……」
あまりにもあっけない流れに貴紘は拍子抜けする。ダイアナは悲しみとやるせなさを含んだ表情で、黙ってそれを見届けた。
「それ、中身は確かなのか」
貴紘がダイアナの手にあるメモリを指差し言った。
「信じるわ、彼らを。皆さん顔をあげて、今度は私が要求を飲む番ね」
貴紘はぎょっとして目を見開く。何を言い出すんだこいつは。
「ご飯食べないの?」
男のうちの一人が間抜けな声でそう言った。ダイアナはにべもなく言った、こんな汚い場所で食べられないの。と。
そう言われた三人がなぜか喜んでいたのが怖かった。
三人は後についてきてほしいと言い、先を歩く。貴紘は小声でダイアナを諌めた。
「お前何言ってんの? 自分から要求をのむだなんて……」
「もとからそう言う約束だったのよ、大丈夫、すぐ終わるから」
いや、これはマズイ。今からでも逃げるか、最悪こいつだけでも逃がさなければならない。
貴紘は辺りを見回した。逃げ道を確認しておかなければ。幸い段ボールだらけで隠れることは容易に思えた。だけど、一向に外に出られそうな扉は見えない。
「ここです」
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