ハンバーグ

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 思わず深いため息が漏れた。いまだに心臓がどきどきしている。いつまでこんな夢を見続けるんだろう。  起き上がると体がだるかった。汗で湿ったTシャツを脱ぎながら、ふと思い出す。  そういえば、いつから寝てたんだろう。  学校から帰った記憶がない。最新の記憶を手繰りよせるも、体育館の倉庫に閉じ込められた部分までしか思い出せない。 「あれ……? どうやってあそこから出たんだっけ」  どんなに思い出そうとしても、電源を抜かれたプレステみたいに、貴絋の頭の中はうんともすんとも言わなくなった。  ベッドから降りて照明のスイッチに手を伸ばすと、すぐにさっき脱ぎ捨てたTシャツが目に入る。見覚えのあるその服は下着用のTシャツではなく、学校指定の体操着だった。 「おい、……おかしいだろ」  体育のあと、着替えずに学校から帰ったことになる。体育が五時間目だったから、昨日はあと一時間授業があるはずだった。  しかしどんなに思い返しても、やはり記憶は戻らない。  □ 「辻くんおはよう」  ドアを開けると、ガランとした教室に光一が一人だけ座っている。 「大丈夫だった? 昨日調子悪そうにしてたけど」  貴絋が挨拶を返す間もなく光一が言った。     
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