ハンバーグ

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 図書室に入ると光一はお気に入りの恐竜図鑑を手に取った。貴絋は本には目もくれず、壁際の席へとまっしぐら。貴絋が座ったのを確認すると、光一もその隣へ腰かけた。 「本読まないの?」  光一は図鑑を開きながら声をかける。貴絋の虚ろな瞳が泳いだ。泳いだ先に行き着いた光一の図鑑を見て、その目に少しだけ光が宿る。 「委員長、恐竜好きなの?」 「うん! ()しはプテラノドン」  貴絋のポケットから時折覗くキーホルダーに、恐竜の小さなフィギュアが付いているのを光一は知っていた。 「わかる! 俺も翼竜ではプテラが1番だな」  途端に笑顔を見せる貴紘は、やっぱり自分と同じ小学生だと思った。 「翼竜じゃなかったら何推しなの」 「……プレシオサウルス」  なぜか少しだけ恥ずかしそうに答える貴絋を見て、光一は嬉しくなった。素の貴紘を初めて見たような気がしたからだ。 「首が長いやつだね!」 「そ。超可愛いだろ。探そうぜ」  二人は図鑑を捲りながら、恐竜談義に花を咲かせる。  貴絋は光一を少し見直し始めた。ただの根暗なオカルト小僧ではなかった。  俺の恐竜豆知識についてこられたのはコイツが初めてだぜ……。     
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