お弁当

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お弁当

「おい、今変な声聞こえたろ」 「え? 何も聞こえないけど」 「嘘つけ! したじゃん変な女の声が!」 「幻聴じゃないの? やめてよ自分だけ特別な存在ぶるの……」 「いやそれお前が言うな!」  静かな図書室に貴絋の声が響いた。注目を浴びた貴絋は(われ)に返って椅子に座り直すと、もう一度よく耳を澄ませる。  さっき、確かに聞いた。絶対に空耳でも幻聴でもない。あんなにはっきり聞こえたんだから。  しかし、しばらくその声は聞こえてこなかった。そうこうしている間に休憩時間は終わってしまう。  □   「いよいよ来週だからね、今日は隣の人とペアを組んで計画を立てて~。帰ってきたら模造紙にまとめて発表します」  担任の花枝が嬉しそうに手を叩く。教室はがやがやといろんなところから楽しそうな児童の声で賑やかだった。 「は? 来週どっか行くんか?」  貴絋の口から思わず疑問が漏れる。独り言だった。 「社会科見学で自動車工場行くじゃない。プリントに書いてあったでしょ」  すかさず光一が答える。プリントは確かにもらったけど見てないし、そういった類いのものは一切真織にも渡していなかった。 「めんどくせ……」 「いまサボろうって思った?」     
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