お弁当

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 鋭い。光一は困ったような顔で貴絋を見つめている。  行かないと言ったら光一は怒るだろうか? しかし、面倒だという言葉だけで済ませられないような、さらに面倒な問題を貴絋は抱えているのだ。 「そしたら僕、一人で新聞作んなきゃ。困ったなぁ」  ――そうか。それはさすがに悪いな。 「じゃ俺が一人でテキトーに新聞作るから、お前は写真だけ撮ってきてよ。それならいいだろ」 「塗装、組立、エンジンって三つコースがあるんだね。どこ見に行く?」 「……。(却下?)」  ……弁当だ。それさえあれば、面倒だけど百歩譲って行ってもいいんだ、そう貴絋は強く思った。  給食が出ない特別授業の日は弁当を持参しなければならない。それが多くの子供たちには嬉しいことに思えるだろう。貴絋にとっては喜ばしくない問題であった。  まず、真織に頼むのが(しゃく)だ。今の時点で頼むとしたら、急すぎてまずプリントを渡していないのがバレるだろう。恐らく彼女は怒りはしないが、貴絋はそれで自分が後ろめたい気持ちになるのが嫌だった。     
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