お弁当

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「でもちゃんとお母さんにプリント渡してるの? 来週見学って知らなかったってことはプリント見てなかったってことだよね? 僕、君がランドセルに何か入れてるの見たことないんだけど。その日の朝にお弁当とか言っても怒られちゃうよ」  ダメだと頭ではわかっているのに苛立ちが治まらず、ブレーキが効かない。 「……黙れよ。お前に関係ねーだろ。皆が皆お前んちみたいに仲良し家族ってワケじゃねーんだよ」  こんなことを言ったところで少しもスッキリしないし気は晴れない。なのになぜ言った? 罪悪感だけが心臓に残る。余計にイライラした。光一の方を見ることができない。 「ごめん僕、何か気に障ること言った……?」  素直な反応を見せる光一が、余計に貴絋の罪悪感を煽る。 「……違う。お前、悪くない」  最低な気分だった。回りの楽しそうな喧騒が余計に気に入らない。 「やっぱり、今朝から少し変だよ。調子悪いなら保健室に行こうよ。僕、ついてくし」 「……ほっとけよ」  やばい、と貴絋の僅かな理性が直感した。絶対に開いてはならないフタが今にも解き放たれようとしているのを、まるで他人事のように眺めている自分がいる。 「でも、友達がそんな青い顔してたらほっとけないよ!」 「うるさい! お前なんか友達じゃねーよ!! 俺に構うな!」     
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