お弁当

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「ちょっ、ちょっと(まき)くんまでどうしたの!?」  学級委員の槙 明吉はクラスの人気者、素行も良好な生徒だった。そんな明吉の乱暴な行動に、花枝は驚きを禁じ得ない。 「先生、すぐ帰るから授業続けてて。松葉も絶対連れて帰るから」 「だめよ、席について! 二人とも落ち着いて、ケンカしないで」  先に貴絋をドアから出させたあと、明吉は歩みを止めずに花枝に言った。 「今しなきゃならないことなんだ。先生信じてよオレ達のこと」  静かにドアがしまった後、教室がざわめいた。  □  屋上へ繋がる階段、普段は立ち入り禁止になっているため人通りはない。そこへ明吉は腰掛けた。 「昨日、お前のこと探しに行く前に松葉がクラスの皆に言ったこと、教えてやろっか?」  明吉は貴絋を真っ直ぐに見てそう言った。  貴絋は余裕のない頭で一生懸命考えた。  ――探しに行く? もしかして、倉庫から出してくれたのはこいつと光一だったのか? 「六時間目は自習だった、着替えを置いたままなかなか帰ってこないお前を心配した松葉が、みんなに言ったんだ」  記憶がないのがもどかしい。貴絋は明吉の瞳を見つめ返すと、話の続きを待った。
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