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明吉は光一と特別仲が良い方ではなかったが、先ほどの件で彼をひどく気に入ってしまった。普段あまり目立つ方ではない光一が大勢の前で意見を主張するということは、彼にとっては勇気のいる事だったに違いない。
明吉はあまりクラスに馴染めていない貴絋の事を少し気にしていた。休憩時間になると気だるそうに外を眺めている彼を一緒に遊ぼうと誘うも、きまって乗ってこない。どうしたものかと考えていたとき、最近光一と楽しそうに会話している貴紘を目にして、少し安心していた。
「でもさ、松葉がこんなに貴絋と仲良かったなんて意外だよな、タイプ全然違うのに」
「仲良いっていうか……僕はそうしたいけど辻くんはそう思ってない感じがする」
「そんなことねーだろ。お前と居るときあいつ楽しそうだもん」
「そうかな。そうだといいけど。でも辻くんは怖そうに見えて意外と普通だよね」
「だな。オレ一年からずっと同じクラスでよく遊んでたよ。でも三年になった頃かなぁ、なーんか急に壁作るようになったって言うか付き合い悪くなったって言うか。前はもっと明るかったんだけどな」
明吉は少し声のトーンを落として続ける。
「あいつ、五年に上がる前までは、萬って名字だったんだ。たぶん、親が離婚したんじゃないかと思うんだけど……聞いてる?」
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