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自分より背が低く、まるで活発そうに見えない。声も小さくどちらかと言えばおとなしい雰囲気の少年だった。
しかし何より、自分に話しかけてくる者は少ないのでそこには驚く。
少年は少しの間固まったあと、慌てて言葉を続けた。
「違うよ! 四月から同じクラスじゃない。ひどいな、覚えてくれてないなんて……」
「そうだっけ」
「しかも今席隣なんだけど……。僕は松葉光一。よろしくね」
確かに、そんな名前を聞いたことがあるような気もした。たぶん四月の最初の自己紹介の時に。
貴絋がそのおぼろげな記憶を呼び戻していると、光一が自分の机の中から何かを探して差し出す。
「これ、辻くんが休んでた時のプリントだよ。僕が預かってたんだ」
「そりゃどうも」
そういって貴絋はプリントの束を受けとると、ろくに確認もしないで机に突っ込んだ。
すぐに中でプリントが折れ曲がったイヤな音がしたが、その瞬間にふと思った。
――そういえば、誰かと話したの久しぶりだな。
「お前委員長?」
「えっ僕? 違うよなんで?」
「だってこんなに早く登校してんじゃん。それに俺のプリント預かったり」
「いや、今日はたまたま早く目が覚めて。プリントは単に隣だから……。それより辻くん随分休んでいたけど、どうしたの? かぜ? 大丈夫?」
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