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「本人からは家族の話聞いたことないよ。でも、噂で聞いたことあるし、僕……そういうのなんとなくわかるんだよね。オーラで」
「そーなの?」
「うん、僕んちも母子家庭だから」
「……そっか。……オレ、そういうのよくわかんないけど、想像したら割ときついんじゃないかと思ってて。もちろん、人それぞれだとはわかってるけど。貴絋が元気ないのってそういうのもあるのかなって……」
明吉がゆっくりとぎこちなく話すのは、言葉を選んで最大限の気を使ってくれているからだというのが伝わってきた。光一はそれを嬉しく思った。
「そういう風に思ってくれる人が周りにいるってことが、きっと助けになってると思うよ」
「そかな。……貴絋ってテキトーそうだけど、実は繊細っていう結構面倒な性格なんだよなぁ」
「繊細なんだ。アハハ」
「オレもだけど」
「アハハ」
「笑うとこ違う」
体育館の扉を開けると、中は静まり返っている。
「いないね、ここじゃないのかな」
「いや、倉庫も一応見てみようぜ。よく漫画であるじゃん? 中にまだいるのに閉じ込められて一晩明かすみたいなの」
「花枝先生ならやりかねないもんね」
「案外抜けてるからな」
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