オムライス

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「アホ! そんなことしたらオレが先生に怒られるだろ。早く教室に戻るぞ」  そのあとの授業はまったく頭に入ってこなかった。自分のしてしまったことの重大さが、時を刻むごとに深刻に感じられた。  あのときの光一の表情が、脳裏に焼き付いて離れない。謝りたい。けど、その先にある未来を想像できない。自分が光一に関わることによって、彼に悪影響を与えてしまうのではないか、そもそももう嫌われてしまったかもしれない。こんな風になるなら近付かなければ良かった。  貴絋は給食も喉を通らず、ただ無駄に時間を過ごした。  □  家に帰ってからすぐにソファに倒れ込む。何も考えたくないのに、自分の言った最低な言葉と光一の悲しい顔ばかり思い出した。  あいつは今、どうしてるだろう? まだ泣いてるのかな。  考えれば考えるほど、罪悪感の重みで体がソファへ沈んでいく。  真織が帰ってきてご飯を作っても、喉を通らない。光一の事が気がかりで何もする気が起きない。どうして明日は学校が休みなんだろう? これじゃますます時間が開いて謝りづらくなる。そんなことを考えながら、貴紘は自分のベッドで眠りに落ちた。  □ 『起きて!』     
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