オムライス

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 貴絋は待つことが嫌いだった。夕飯が入った電子レンジ、ゲームのローディング、コンビニのレジ。イライラして仕方がない。  しかし、来るかどうかわからないものを待つことがこんなに不安なことだとは知らなかった。  せわしなく行き交う人々の中に、待ち人はいっこうに現れない。時計はもうとうに11時を過ぎていた。  自分達と同じ年頃の子供を見かける度に心臓が跳ねた。直後、とてつもなくがっかりする。  もう無理かもしれないな。貴絋はそう思った。  元々来ると期待してはいなかったが、実際に待ち合わせの時間を二時間を過ぎようとしている時計を見ると、さすがに(こた)えた。それでも足がそこを動かない。  自分が素直に約束していれば。あのときあんな風にイライラしなければ。光一に酷いことを言わなければ。きっと今頃二人で楽しくブラキオサウルスに餌をやれていたのだ。  13時を過ぎようとしたとき、伏せた視線の先に見覚えのある靴のつま先が現れた。すぐに顔をあげるとそこには決まり悪そうな顔をした光一が立っていた。 「友達じゃないのにずっと待ってたんだ?」  開口一番にそう言った光一の冷たい顔を見て、貴絋の胸は少し痛んだ。その痛みで、まだ優しい言葉を期待していたのかとすぐに恥ずかしくなる。 「……お前って大人しそうに見えて結構言うよな」     
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