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光一は目を丸くした。出ようとした夢のない台詞を慌てて飲み込み、慎重に言葉を選んだ。
「辻くんち、サンタさん来るの?」
「来るよ毎年……え? ここの家には来ねーの?」
「もう来てくれなくなったよ」
貴絋は驚いた後、居心地悪そうに謝った。
光一は笑いをこらえるのに必死である。まさかこの貴絋がサンタを信じているとは……。
光一の家ではサンタは来ないが母親がプレゼントを買ってくる。健気な光一はプレステ4を母親にねだれない。
「まぁでも……あのオッサンもちょっと変だから親御さんが心配する気持ちもわかるよ。たぶんお前の母さんが断ってんだよ」
「なんの話!?」
「これ言っていいのか? なんか無垢な子供に社会の汚い部分を教えるみたいで罪悪感あるな」
「君はサンタと何をしてるの」
「クリスマスの前の晩に、靴下置いとくだろ? その中に笑顔の俺の自撮り入れとくんだよ。それとプレゼント交換ってわけ」
「なんで!?」
「知らんけどそうしないとくれねーんだもん」
光一はまだ会わぬ貴絋の母親にそっとエールを送った。できればお母さんに笑いかけてあげてほしいなと思ったが、それはやはりどうしても言えなかった。
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