オムライス(焦)

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オムライス(焦)

「すっごく楽しかったね!」  頬を紅潮させて満面の笑顔を見せる光一は、本来の歳よりずいぶん幼く見えた。 「俺も」 「辻くん餌やるとき叫んだの面白かったよ……あ、思い出したらまた笑けてきた……ハハッ!」 「……笑いすぎだろ」  化石発掘体験に、どこかの外国から持ってこられたという珍しい模型、標本。展示物全てが二人の心を掴んで離さなかった。建物から出てしばらく経つも、興奮がまだおさまらない。貴絋は久しぶりに心から楽しんだ。  やっぱり来て良かった。一人よりずっと楽しい。そもそも一人だと、こんなイベントがあることすら知らなかったわけだけど。貴絋はそう思いながら、まだ思い出し笑いをしている光一の横顔を眺めた。 「そーいえば、お前姉ちゃんいるって言ってなかった? 今日家で見なかったけど」 「ああ姉ちゃんね。一緒に暮らしてないんだ」 「なんで? もう就職してんの?」 「父さんと暮らしてるから。僕が幼稚園の頃、両親が別れたんだよね」  貴絋は、即座に昨日の自分の言った言葉を思い出した。  ――『皆が皆お前んちみたいに仲良し家族ってワケじゃねーんだよ』     
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