オムライス(焦)

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 今日光一の母親を見て、よく似た親子だと思った。顔が似ているのはもちろんのこと、穏和な雰囲気や笑い方などそっくりで少し驚いたほどだ。それに、全然ひねくれていない光一を見ていると、大切に育ててこられたのがわかる。もちろん、自分が大切にされていないと感じたことはなかったが、自分と似た環境でも、光一はこうも違うのかと目から鱗が落ちた気分だった。 「あーそうだ、これやる」  貴絋のポケットから出されたものは、もう包装がシワシワになっている細長い包みだった。さも今思い出したかのように振る舞ったが、実はいつ渡そうかとずっとやきもきしていた。ポケットの中で握りしめすぎたせいで、包みにはもうハリがない。 「なにこれ? くれるの? あけていいの?」 「いらなきゃ捨てろよ」  光一が包みを開けると、中からはプテラノドンのモチーフの付いたシャープペンシルが出てきた。 「わぁかっこいい! さっきこれ買ってたの? えっでも僕これもらっていいの? どうして? 辻くんのは?」 「俺は勉強しないからいらねーし」 「しなよ!」 「今日の昼御飯のお礼……お母さんによろしく」 「えーっ そんなのいいのに……でもありがとう」  光一は大切そうにそれをポケットにしまった。  昼御飯のお礼。本当はそれだけではなかったが、説明するのが気恥ずかしくて言わなかった。できれば光一に気づかれませんようにと心の中で祈る。  駅から出るとき少しだけ名残惜しさを感じた。 「じゃあ俺、こっちだから」 「うん、バイバイ」  歩き出そうと踏み出したとき、光一が貴紘の名前を叫んだのが聞こえ、振り返る。     
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