ラムネ

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「ちゃんと確認しないからだよ、もう」  プリント、連絡帳の存在意義をやっと理解した貴絋だった。 「貴絋……ッ! お前体張ったな!」  明吉が爆笑しながら近付いてくる。 「ボケじゃねーから」 「かっこつけてる……! ラ、ランドセルの癖に……ッ!」 「黙れ。あっちへ行け」  肩をパンチしようとた貴絋の拳を受け止めた明吉が、今度は正真正銘のさわやかな笑顔で言った。 「仲直りできて良かったな。もうケンカすんなよ?」 「……お前やりづれーよ」  明吉と言うクラスの中心人物が来たことで自然と注目がそこに集まる。そして、それをさらに盛り上げる事態が起ころうとしていた。 「た……、タカヒロ!」  鈴を転がしたような可憐な声が響く。貴絋は自分の席の目の前に立った人物を見上げた。  小柄だがやけに存在感の強い女子だった。名前は思い出せない。その眼差しは貴絋の名前を呼ぶ割には、窓の外を眺めている。  タカヒロ。ごく普通のよくある名前だ。  自分のことではないなと認識した貴絋は、何のリアクションも起こさず、光一の方を向く。 「……呼ばれてるんじゃない?」  光一は困り顔で彼女を指差した。 「? 誰、こいつ。初対面で呼び捨てされる(いわ)れないんだけど」     
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