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近くから、貴絋の言葉に噴き出す声がいくつか聞こえてきた。
貴絋は、ダイアナの置いていった包みをランドセルにしまおうとして、ギクリとする。
ランドセルの中に弁当箱が入っていたのだ。
□
校庭に停めてあるバスに乗るときに、後ろから声を掛けられる。
「辻くん何か落ちたよ」
振り向くと貴絋のポケットから落ちたらしい家の鍵を、クラスメイトが拾って渡してくれた。
「……どうも」
受けとると、拾ってくれた彼は少し恥ずかしそうに笑って見せた。こんな風に笑いかけられたのは初めての事で、貴絋は驚いてすぐに目線をそらす。そのまま急いで空いた席を探した。
座席に腰掛けると、窓側に既に座っていた光一が窓から地面を見下ろして喜んでいる。彼はテンションが上がるといかにも子供のようになる。
「ねー辻くん、高いところから下見るのって気分良くない?」
バカバカしくて返事をしなかった。それより貴紘にはさっきから物凄く気になることがある。ランドセルに入っていた弁当箱だ。ずっしりと重く、明らかに中身が入っている。一体誰が?
もちろん、弁当を包んであるバンダナは見覚えのある自分のものだった。誰かが間違えて入れたなんて事は万が一にもない。
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